
最近、電車で本を読む人もめっきり減りました。
スマホが普及する前は、私の読書の時間の大部分が通勤中だったように思います。
そんなことを思い出すと、我が家にある一冊の本が浮かびます。
あるとき、母が私の娘に渡した、分厚い本。
『ハリー・ポッターと賢者の石』でした。
話題になっているからと母も読んでみたようですが、ファンタジーの世界を「ちょっと子どもっぽい」と感じたらしく、まだ小さかった娘にくれたのです。
当時、娘はまだ小学1年生。絵も入っていないし、大人が見てもかなり分厚い本です。
ところが娘は、たちまちその物語のとりこになりました。
それからというもの、新刊が出るたびに買い揃えることに。
そして、子どもには重いであろうその本を、どこへ行くにもリュックに入れて持ち歩いていました。
おかげで1巻の表紙はボロボロ。背表紙も取れかかっています。でも、こんなになるまで読んでもらったのですから、この本も本望でしょう。
その後、娘はファンタジー作家になりました…。
と言いたいところですが、現在はまったく違う仕事に就いています。
それでも、子どものころに「ここまで夢中になれる本」に出会えたことは、とても幸せなことだったと思います。
本は、いつまでも残る「思い出」になる

子どものころに遊んだおもちゃは、成長とともに使わなくなることがあります。
ゲームも、流行も、その時代とともに変わっていきます。
けれど、本は少し違います。何年も経ってから本棚の奥で見つけると、
「これ、あのとき読んでたな」
と、そのころの自分まで一緒によみがえってくることがあります。
私自身も、子どものころに読んだ本のタイトルを見ると、その本を買ってもらったときのことや、読んでいた部屋など、そのころの暮らしまで思い出すことがあります。
だから、本を贈るというのは、単に「読むもの」をプレゼントすることではないのかもしれません。
その子の記憶に残る時間を贈ること。
そんなふうにも思います。
「読んでほしい本」より「自分が好きだった本」を

孫に本を贈るとなると、
「何を選べばいいのかわからない」
という人も多いでしょう。そんなときは、無理に今人気の本を探さなくてもいいと思います。
たとえば、自分が子どものころに夢中になった本。
「私はこれが好きだったのよ」
と渡してみる。
もちろん、好みは違うので、気に入ってもらえないこともあります。
でも、それでいいのではないでしょうか。
「おばあちゃんは子どものころ、こんな本を読んでいたんだ」
そんな会話のきっかけにもなります。
そして、もし好みがわからなければ、いっしょに本屋へ行くのもおすすめです。
「今日は好きな本を一冊選んでいいよ」
と言われたら、子どもにとっては、それだけでもちょっと特別な体験になるはずです。
年齢より「その子が夢中になれるか」

本選びでは、対象年齢もひとつの目安になります。
でも、必ずしも年齢どおりでなくてもいいのではないでしょうか。
娘が小学1年生で読んだ『ハリー・ポッター』のように、少し難しそうに見える本でも、本人が夢中になれば読んでしまうものです。
逆に、対象年齢にぴったり合っていても、本人が興味を持たなければ読まない。
結局のところ、本選びで大切なのは「何歳向けか」だけではなく、その子が何に興味を持っているかなのかもしれません。
恐竜が好きなら図鑑。
宇宙が好きなら宇宙の本。
物語が好きなら小説。
料理が好きなら子ども向けの料理本。
図鑑やビジュアルブックなら、祖父母と孫が一緒にページをめくりながら楽しむこともできます。
「本」ではなく「本を選ぶ時間」を贈る

どうしても何を選べばいいかわからないなら、図書カードを贈るという方法もあります。でも、もう一歩踏み込んで、
「今度、一緒に本屋さんへ行こう」
というプレゼントにしてみるのも素敵です。
大型書店で好きな本を探して、お茶を飲んで帰る。あるいは、図書館へ行って一緒に本を探してみる。
そんな時間そのものが、孫にとっては思い出になるかもしれません。
大人になったとき、
「子どものころ、おばあちゃんと本屋さんに行ったな」
と思い出してもらえたら、それも立派な贈り物です。
次に会うとき、一冊の本を手土産に

本は、高価なものでなくても構いません。
新しい本でなくても、自分が昔大切にしていた本を譲るのもいい。
「これ、昔おばあちゃんが読んでいたのよ」
そんな一言を添えて渡すだけでも、その本は少し特別なものになります。もしかしたら、何十年後かにその本を手に取って、
「そういえば、あのときもらった本だ」
と思い出してくれるかもしれません。
私の娘が夢中になった、ボロボロの『ハリー・ポッター』のように。
次に孫に会うときは、ゲームやおもちゃだけではなく、一冊の本を手土産にしてみませんか。
その一冊が、いつか思い出の一冊になるかもしれません。
「孫に贈りたい本」おすすめ10選
ハリー・ポッターと賢者の石
「夢中になる本」の代表ともいえる一冊。 今回の記事のエピソードにも登場する、世代を超えて楽しめるファンタジーです。
こんな孫におすすめ: ファンタジーや冒険の物語が好きな子に
かいけつゾロリ
楽しく読めるので、読書がちょっと苦手な子にも。 シリーズがたくさんあるので、気に入れば次の一冊へつながります。
こんな孫におすすめ: 本よりゲームや遊びが好き、という子にも
大どろぼうホッツェンプロッツ
長く読み継がれている児童文学の名作。 おじいちゃん・おばあちゃん世代にも馴染みがあり、世代を超えた会話のきっかけにもなります。
こんな孫におすすめ: 昔ながらの物語や冒険ものが好きな子に
星の王子さま
子どものころに読むのと、大人になってから読むのでは、 感じ方が変わる一冊。長く手元に置いておきたい名作です。
こんな孫におすすめ: 物語だけでなく、いろいろなことを考えるのが好きな子に
図鑑――「好き」が見つかる一冊を
本は物語だけではありません。 恐竜、昆虫、宇宙、動物など、その子が夢中になっているものの図鑑も立派な「本のギフト」です。
こんな孫におすすめ: 好きなもの、興味のあるものがはっきりしている子に